非営利活動事業/人道支援事業 <カンボジア>


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人道支援事業:カンボジア人道支援
期間:2月8日〜
2月12日
<収支報告> 
2005年2月の記録
パームトゥリーNGO
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ドリーム孤児院の現状調査とミーティング (孤児60名、スタッフ19名)
- 農業プロジェクトの現状調査(カンポット州プレイピイ村)
- 新・教員スタッフ(アメリカ)入居


カンダール州 ロネァ村
- 手織物の村

パームトゥリーNGO

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支援先と主な受益者

前回訪問時、スタッフ全員と運営体制と教育の方向性について、具体的な話し合いを続けました。そこで代表のポール氏ふくめ、スタッフ一同が同意し決定した事項について、実行できているか、現状を把握するために事前告知をせず訪問調査を行いました。

前回の決定事項は主にスタッフの勤務、業務、運営に関わるものでした。その中でも下記の点が遵守されているか、改善されているかを今回のチェック項目としました。

調査項目
1)スタッフ(正社員)の副業を認めない。
2)子ども達に衛生、清掃、生活秩序を教え実行をスタッフが示し共に行う。
3)勤務時間、担当業務の遂行。
4)団体の目的、方針を明確にし、規則は公に告知して団体が遵守し、対外的に理解を求める。(インターネットホームページ、訪問者へ口頭で明確に説明など)

問題点
日本では当たり前のことのように思われる項目ですが、カンボジアの水準は日本と大きく異なります。子ども達に支援を行いめまぐるしい成長を見せる一方で、彼らの養育を行うスタッフの怠慢が目につくようになってきました。

昨年9月から、日本人とアメリカ人スタッフの現地駐在により、日常生活のレベルで現状を細かく把握できるようになりました。日本人スタッフ1名は主に養育・生活面で、アメリカ人スタッフは英語・コンピューター教育と農業指導を中心に従事しています。

また、このNGO支援だけではなく、他団体や村の支援、現地団体との協働プロジェクトを行い、これらを通じてカンボジア、カンボジア人について理解を深めてきました。一般的に見てこのNGOが特に怠惰であり、意図的に虚偽の運営を行っているということはないのですが、より自立の道を目指したいのであれば協働事業を継続、そうでなければ支援は打ち切らなければならないという私達の意向を示してきました。

私達の支援がなくなっても、今のパームトゥリーNGOの子ども達支援に関心を示している外国団体や個人も少なくは無く、また彼らの努力で新たな支援者を得ることは難しくないことは双方認識しています。上記の(1)にあるような、スタッフが副業(外国からの訪問者に対するガイド、運転手)を行い、自分の収入を得、孤児院に訪問者を連れて来て支援を依頼すれば協力を得られる状況です。贅沢につながる支援を得たいがために、八方美人的な行為を行うのであれば、私達は他に支援をまわしたい、ということです。

創立者・代表者のポール氏も、私財でNGO設立を行った志ある人物で、私達からの支援がなくなっても資金は自力で調達できる力もあります。要は、他の理事を含むスタッフ一人ひとりの自覚と責任感が非常に浅く、カンボジア人同士でも依存関係があることを私達は問題視しており、結局それが子ども達へ影響を与えることになると危惧しているということです。

私達の支援する「自立」というのは、日本人や他の国と同じ生活水準、経済水準を目指すことではありません。ガユーナ・セアロの言う「自立」とは、どんな状況であっても、環境に条件を求めることなく生きる喜びを見出し、自分の持っているものを生かして自分の人生を自分で築き上げることができる、ということです。

しかし、これを押し付けることは目的ではなく、あくまで支援を受ける側に選択はあり、求めるのであれば続けて共に歩みましょう、そうでなければもう大丈夫なのだから、ご自由に、ということです。

これらを代表者、スタッフを含めた全員で話し合い、合意して前回の訪問を終え、その後の様子をよりシビアにお互いが見つめるために今回の突然訪問調査を実施しました。

現状報告と今後の見通し
今回の訪問により、私達のよりシビアな支援姿勢が相手に伝わりました。いつもはスタッフが送迎や通訳をしていましたが、それによってスタッフ間に不必要な上下関係が生まれつつあったものが解消されました。支援者を連れてくること、通訳する者がえらいわけではなく、私達が支援している目的である子ども達へどれだけ愛と誠実さをもって仕事をしているかを重要だと、私達は伝えたいんだということが理解されたと思います。

日本語−クメール語(カンボジア語)の通訳者を雇い、今まで伝わりきらなかったこともはっきりとスタッフ全員が理解することができました。また、駐在していた日本人スタッフが5ヶ月間子ども達と寝食を共にし、運営について、スタッフの勤務態度について様々な問題提議をしました。

日本人スタッフは、当初子ども達のお母さん役として駐在を決めました。生活面、衛生面、秩序や道徳といった指導が生活に密着したところでできるようにと、孤児院に寝泊りしながらのボランティアです。

水道管が壊れ子ども達はトイレの水で体を洗っている、電気が消えて暗いところで自習している、訪問者が突然来て授業が中断することが多く、遊んで物をもらうことばかりで子どもは人に気に入られる方法や物を粗末にすることを覚え始めている、可愛い子は個人的に服などをもらい、ある子は拾ってきたカップ麺の器で1つのスプーンを3人でまわしながら食べている...等、実際に一緒に暮らし子どもと共に生活をしていないと見えてこない問題が沢山ありました。

これまでパームトゥリー以外でも、数々の施設を訪問しながら、大人は一体何をしているのだろう、と運営や体制を疑問に思うことも多く、また過剰で自己満足的な一過性の支援についても依存を招くだけではないかと問題視してきた点が、日本人スタッフが駐在したことにより、当事者たちに事実を証言として示すことができました。

代表のポール氏は、休暇をとることもなく、新たに始まった農地のプロジェクトのためにプノンペンと農地(車で4時間)を往復する毎日で、熱心に子ども達のことを考えて活動を行っています。しかし、他のほとんどのスタッフは上記のような問題があっても無関心、昼寝をして過ごしポール氏の指示があれば忠実に動いてもそれ以外は聞いていないという理由だけで何もしませんでした。代表者も知らなかった事が明らかになり、ショックもあったようですが、前進できるきっかけができました。

代表者がガユーナ・セアロと共に歩み、カンボジアの子ども達の幸せのために貢献したいと望む以上、従えないスタッフは辞めるか正すかの二つに一つしか選択はない、ということもはっきりとしてきました。

話し合いにより、この日本人スタッフ、佐藤洋子さんを、孤児院の院長先生として業務にあたることを決定し、よりこまやかなケアと教育を子ども達に与えることを目指すことにしました。佐藤院長は、日常に関わる会計、運営規則やスタッフの業務を監督を担い、ポール氏と二人三脚でパームトゥリーNGOを運営することになります。これによって、継続した当団体との協働事業を進めていくことができ、佐藤さんからの連絡、報告によって、日本の支援者との架け橋も強く太いものになっていくことが期待されます。

現職のスタッフは、口では常にやるといいながら出来ていないことから、各スタッフ別に細かな業務指示と業務に関わるチェック項目をリストに作成し、遵守する契約に同意した上で、継続勤務することになりました。これによって、スタッフのメンバーも変化することも見込まれますが、依存から自立は決して生まれないこと、私達が目指している「自立」の達成にはしかたのないことです。

子ども達にもそれを示す必要があります。子ども達の中には、授業のアシスタントができる優秀な子どももいて、作業や手伝いも積極的に楽しんでよくやります。スタッフがいなくても子ども達だけで十分やっていけるとも、佐藤さんは感じているほどです。現実、大人になっていく彼らがスタッフや教員になることも可能性は高いわけですから、スタッフに対してシビアになり、今から体制を整える必要があります。

次回5月に訪問を予定しています。その時点でまた話し合いの場を持ち、更に改善を続けていくことをみんなで誓いあいました。


農地プロジェクト近況報告
孤児院では、様々な課題がありましたが、農地(カンポット州)のプロジェクトは順調に進んでいます。この2ヶ月間、ポール氏も農地開拓に力を入れ、ダン先生(菜園指導)と3名のスタッフ(調理担当1名含)に、9名の子ども達が元気に暮らしています。

農業プロジェクトについては、こちらをご覧ください。



カンダール州 ロネァ村
パームトゥリーNGOの農地プロジェクトでは、農業だけではなく、広い土地を利用して子ども達の職業訓練を様々な分野、業種で行っていく予定です。年齢の高い女の子達のために、織物、縫製技術の訓練が、現在優先する候補としています。

残念ながら、農地周辺の村にいる人々は織物を継承しておらず、お年寄りならやったことはあるが織り機がない、という状況です。まずは子ども達の学習環境を整えるため、織物が盛んな村を視察に行きました。

プノンペンから約1時間、フェリーで川を渡ったロネァ村では、ほとんどの家屋の1階に織り機を1台は備え、あちこちで糸をつむいだり織物を作る風景がみられます。めずらしく若い男性も織物をしているような、自立した村に見受けられます。

日本やアメリカで、バザーなどを行いその収益が人道支援活動に役立っていることから、出来上がった製品の買い付けを行いました。直接産地で購入することにより、村の人々の支援にもなります。

私達が物を買ってくれると分かると、あちこちから作ったものを持って人が集まり、ちょっとしたマーケットが1軒のお宅に開かれたようでした。外国人と分かると、いい加減な値段を言ってきます。私達は、かならずカンボジア人同士の価格をあらかじめ調べ、その適正価格でしか物は買いません。

高くふっかけられても、日本で考えると値段は安く、手織りで作られたものと考えると買ってあげたくもなるのですが、それをしてしまうと、次から外国人をみれば、その値段で買ってくれると期待するでしょうし、繰り返すうちに市場価格を高め、物価が上がり、外国人が足を向けなくなってしまったとき、結局彼らの首を絞めてしまうことになります。

適正な価格で取引し、正直な人々とは長く継続したおつきあいをする、ということが大切だと考えています。

また、この村で心ある人とつながることができれば、子ども達への織物指導に協力を得ることができるのでは、と期待しています。


現在51名の子ども達が暮らすドリーム孤児院。
9名とスタッフ3名は農地で暮らす。
代表ポール氏から、少し厳しい内容の決定事項がスタッフ、子ども達に語られた。
一番厳しく、こわいけれど、子ども達に誰よりも頼りにされている佐藤洋子さん。院長先生に就任。
生活指導を行いながら、日本語事業を11月から始めた佐藤さん。子ども達はひらがな、カタカナを簡単に習得。
アメリカからの新しい教師、クリス先生。コンピューターが専門で、英語とコンピューターのクラスを担当します。